建築業のカイゼンは今がチャンス!自社の課題の見つけ方と改善方法

From: 中小企業応援サイト

2022年11月10日 06:00

この記事に書いてあること

建築業はなぜ今、自社のカイゼンが必要なのか?

こんなお悩みありませんか?

昔と同じことをしているけど、昨今売上が減少している。材料費高騰により利益を圧迫している。2024年4月から始まる時間外労働の上限規制への対応を考え、採用を強化したいけど、人が集まらない。業務の効率化が進まず、長時間労働になってしまっている。

建築業界は、昨今、オリンピックや都市開発が相次ぎ、好調を見せています。一方で、慢性的な人手不足の状態にあり、特に若い人材が不足しています。
働き方改革や副業の推進、仕事の価値観が変化する中で、建築業は力仕事で「キツイ・汚い・危険」と言った3kのイメージが先行してしまいます。市場は好調でも、人材がいないと仕事を受けられないと言うことになってしまいます。

今後、多くの人材を確保していくためには、社内改革と並行してこれまでのイメージを払拭していく必要があります。

そうは言っても、日々の業務に追われ何から始めたら良いかわからない、相談する人がいない、ICT知識がないため、どのようなICTツールを導入すればよいかわからない。
こんな風に考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスの影響や物価高騰、少子高齢化など自社だけでは解決できないさまざまな外的要因があり、建築業界で働く従業員も将来に不安を感じています。
まずは、社内の業務フローの見直しや働き方改革、生産性向上を通じて、働いている従業員に対し、会社の信頼度を高める内的カイゼンが重要となります。
2024年4月からは、労働時間の上限規制や同一労働同一賃金、時間外割増賃金の引上げなど、遵守しなければならない法令が増えることになります。

これらの対応を見越しても、業務カイゼンを進めるには、今が大きなチャンスと言うことになります。

カイゼンの第一歩。まずは悩みの原因を探し出す

まずは、問題と課題の違いについて整理していきます。
問題点とは、「あるべき姿」と「現状」とのギャップです。

課題とは、発生した問題点に対し、解決しないといけないことです。

例えば、工事現場で工事が遅延しているときは、その状況が問題であり、その理由として
•    人手が足りない
•    スキル不足
といったことが課題となります。

問題は「解決する」といい、課題は「達成する」といいます。問題または課題を特定し、問題解決または課題達成を繰り返して行うカイゼンを継続的改善といいます。
まずは、「問題」を認識することがカイゼンの第一歩となります。

ここでは、どのように問題点や経営課題を見つけるかについて解説していきます。

自社の財務状況を可視化する

削減すべきコストはどこなのか、経営の資金繰りにおいてどこにネックがあるのか、売掛金の回収はちゃんとできているかなど、財務状況や金銭の流れを可視化することが大切です。

きちんと把握することで、どの工事で利益がでて、どの工事で利益を圧迫しているかなど分かるようになり、課題が見つけやすくなります。

業務フローの確認

業務フローを見直すことで、業務内の属人化している箇所を発見し、作業効率を高めることができます。
業務に属人化している部分があると、社員ごとに業務量の偏りが出たり、特定社員の退職によって現場作業に支障が出たりする可能性があります。

外部の専門家に依頼する

長年同じやり方で業務を行っていると、自社のどこに問題あるのか分からなくなります。
第3者の専門家の意見を聞くことで、自社ではわからなかった問題点や課題が浮き彫りになります。

業務診断ツールを使う

財務状況の可視化や外部の専門家にお願いしたいけど、そもそも、日々の業務で忙しくてそんな時間が取れないという方も多いと思います。
昨今では、AIを使って課題を把握できる便利な課題診断ツールや財務分析ツールがあります。以下の建築業の課題診断では、無料で診断できメールにて診断結果が送られてくるため、社内のカイゼン会議等にも活用できます。
中小企業診断士監修 建築業の課題診断

中小企業診断士監修の建築業の課題診断

さまざな業種に特化した診断ツールもあるので、このような診断ツールを活用して、まずはざっくりと自社の課題を把握することができます。

課題を把握したあとにするべきこと

経営課題が把握されたら、解決方法を考えます。
課題が複数ある場合は、どの課題が緊急性が高く重要かを考えましょう。リソースを分散し過ぎると、すべての課題に対して中途半端になってしまい、解決できない可能性があります。経営課題を4つの分類にわけると、何を優先するかが明確になります。
基本的には、課題に対するカイゼンの難易度とその効果で考えます。
・カイゼンが易しく効果も大きい
・カイゼンは易しいけど、効果が小さい
・カイゼンは難しいが、効果は大きい
・カイゼンは難しく、効果も小さい
カイゼンが易しく効果があるものからカイゼンを行うことになります。このとき、投資コストや実行期間、カイゼンの難易度や効果を比較し、どの改善案が費用対効果が高いのかを考えて優先順位の高いものから進めます。

経営課題を解決する方法

業務プロセスをカイゼンする
業務プロセスの見直し業務を見える化をすることで、全体のパフォーマンスに影響を与えているボトルネックを解消できれば、業務の効率化やサービスの品質向上が期待できます。固定費削減や残業時間の削減にも繋がります。

社内体制についてカイゼンする
社内評価制度のカイゼンで、適正に社員を評価できれば、社員のモチベーションが高まります。社員の能力をきちんと把握することで、効果的な社員育成も可能です。
また、社員とコミュニケーションを取りながら見直しを進めることで、信頼関係を構築することができます。そして、社員のスキルの再発見にも繋がります。

ICTツールの導入を考える

ICTとは、「Information and Communication Technology」を略した言葉です。コミュニケーションに関わる情報通信技術と言えます。最先端のIT技術を導入することで、作業の効率化を図ることを意味しています。
職人の高齢化や建築業の担い手不足など、建築業界では大きな課題となっています。
ICTツールを活用することで、人手不足の解消、業務効率化、一部の業務でテレワークも可能になります。

カイゼンによって変わった建築業の事例を解説

では、実際に課題を解決してきた企業はどんなカイゼンをおこなってきたのでしょうか。
建築業の事例を中心にお伝えいたします。

①作業効率向上や社員間の情報共有促進などを実現した事例

三友組(新潟県)のカイゼン事例

課題
原価計算、給与計算、会計の3つの事務処理に異なるメーカーのソフトをそれぞれの担当者が活用していました。それぞれのソフト同士が連携されておらず、また担当者同士のつながりも希薄でした。業務効率化のため社員と業務を洗い出し、必要なソフトの検討や効率化の度合いなど丁寧に議論して導入に臨みました。

カイゼンポイント
事務部門の業務の洗い出しを行い、業務の無駄を直視し、抜本的な改革に着手しました。これまで活用していたソフトをバージョンアップし、ソフト間の連携がしやすい環境を整えました。社長自らが旗振り役となり、社内の業務改革を推進しました。改革への取組を給与アップにつなげることで、社員のポテンシャルを引き出す原動力にもなっています。結果として業務効率化だけでなく、より風通しの良い社風に変化しました。また、新事業へ挑戦する意欲やアイデアの創出にもつながると期待できます。

#建設業(土木)の事例

「3倍のポテンシャルがある」と社員に宣言 ICT活用から始まった三代目社長の改革 三友組(新潟県)

#建設業(土木)の事例

「3倍のポテンシャルがある」と社員に宣言 ICT活用から始まった三代目社長の改革 三友組(新潟県)

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②OCRで紙文書を瞬時にデジタルデータ化作業効率を向上させた事例

昭栄建設(三重県)のカイゼン事例

課題 
建設業界では、工事の着手前・施工中・完成時・完成後の段階で、さまざまな書類を発注者に提出します。テンプレートをダウンロードできるときは効率よく書類の作成をできますが、発注者によってその様式はバラバラです。
データでダウンロードできない場合は、テンプレートから作成する必要があります。FAXで様式のテンプレートを送ってもらうなど紙ベースでの対応が必要となり、電話対応や来客対応をしていると半日仕事になることもあります。
 
カイゼンポイント
この課題を解決してくれたのが、業務のデジタル化を促進するために昨年10月に導入したOCRの機能を備えたスキャンシステムです。
OCRを活用することで以前は半日がかりだった作業を30分程度で終わらせることができるようになりました。紙文書を複合機でスキャンするだけで、Excelのデータに変わった状態でパソコンに届くので、以前のようにテンプレートそのものを作成する必要がなくなり、ピンポイントで一部を上書きするだけで作業が済むようになりました。

さらに、手入力の転記ミス防止・OCRでデータ化すれば書類探しの手間削減や、紙の保管場所削減にも役立ちます。

ほかにも、昭栄建設では現場で施工管理システムを活用するなど積極的にICTを活用しています。ICTの導入による業務の効率化によって確保した時間を、情報発信の取り組みなど会社の存在感を高めるプラスアルファの業務に充てることができます。

#建設業(土木)の事例

OCRで紙文書を瞬時にデジタルデータ化 半日仕事だった発注書の入力作業が30分に 昭栄建設(三重県)

#建設業(土木)の事例

OCRで紙文書を瞬時にデジタルデータ化 半日仕事だった発注書の入力作業が30分に 昭栄建設(三重県)

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③現場でも入力できる勤怠管理システムで無駄を省き生産性向上させた事例

山﨑建設(新潟県)のカイゼン事例

課題
以前は、現場に出ている社員も出勤簿にハンコを押すために本社に寄らなければならなく、効率が悪い働き方となっていました。


カイゼンポイント
働き方改革を目指し、社員の勤務時間を記録しやすくするために建設業向けの勤怠管理システムを導入しました。システムを導入したことで、現場からスマートホンで出勤・退勤時間を打刻できるようになり、わざわざ本社に寄らなくても済むようになったので社員にも好評です。バックオフィス部門も、紙文書で勤務時間を管理していた時と比較すると、システムのおかげで労働時間が見える化できるようになり助かっているとのことです。将来的には、勤怠管理システムと給与計算の連携を目指しています。
また、生産性向上を目指し、本社に届いたFAXをweb経由で出先から見れる複合機に入れ替えました。社員の生産性を阻害しているのは、こうしたこまごました時間の積み重ねが原因となっている場合が多いです。
山﨑建設では、社員が会社に戻らず生産的な仕事が出来るようにするため、働き方改革に積極的に取り組んでいます。

#建設業(土木)の事例

ドローンとICT施工に強み、SDGs推進で地元貢献に力 山﨑建設(新潟県)

#建設業(土木)の事例

ドローンとICT施工に強み、SDGs推進で地元貢献に力 山﨑建設(新潟県)

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建築業の課題を見つけられるツールをためしてみましょう

ここまで、課題の建築見つけ方・カイゼンのポイント・カイゼン事例についてお伝えしました。
ここからは、部門ごとの課題がわかる建築業の課題診断ツールをご紹介します。
中小企業診断士監修 建築業の課題診断

中小企業診断士監修の建築業の課題診断

日々の業務に追われ、なかなか自社の課題を見つけられないと感じている方は、ぜひこの建築業の課題診断ツールを活用してください。簡単な質問に回答するだけで自社の最優先課題が分析できます。
営業部門、設計・施工部門、人事・経理部門と分かれているため、実際働く従業員に質問に答えていただくことで各部門の最優先課題がわかります。
また、中小企業診断士によるアドバイスと、自社に適したおすすめのICTツールを確認することができます。
短時間で自社の課題を診断してもらいたい・どこからICT化してよいか分からないと感じている方にお勧めの診断ツールとなっています。

金城篤子氏の顔写真

執筆者

金城 篤子(かねしろ あつこ)

東京都中小企業診断士協会城南支部所属。中小企業診断士。建設業経理士1級。建設会社の経理部門に10年間従事する。自社の基幹システム構築や会計システムとの連携、経費精算の電子化、電子帳簿保存法の対応、人材確保のためのホームページ刷新など、自社のDX化に努めてきた。

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